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るんめぐ♪物語

るんめぐ♪物語

耳が立たない



Y.Tさんが、ヨーキーを2匹連れてきてくれたとき、赤いリボンをつけた仔を撫でながら、「この仔は耳が立たないかもしれない」と言われた。

ヨーキーは耳がピッと立ち、アーモンド型の目で、スティールブルーの毛、体重は2キロ前後が理想と言われている。
耳が立たないヨーキーなどいるのだろうか・・・・・
私は、この小さな仔にヨーキーの理想の姿を当てはめようとしていた。
3ヶ月を過ぎても耳が立たなければ、もう立たないかもしれないと、ある方に言われた。獣医さんにも「この仔の耳は立たないと思いますよ。ショードックに出すわけでもないし、いいじゃあないですか。顔つきはしっかりしているし。」そうあっさりといわれた。

トリマーさんに相談したら、「耳張りをすると立つ仔がいます」と言われ、せっせと耳張りをしてもらった。でも、ダメだった。耳のなかに発泡スチロールのようなものを入れて、テープでとめる方法で1ヶ月がんばってみた。まるで、鬼っ子のような姿になってしまった。テープで皮膚がかぶれて本当に痛々しかった。
家族の反応も悪く、私は、みんなに「動物虐待だ」と非難され、自分自身もどうして、るんのありのままの姿を受け入れることができないのか・・・と悩んだ。
1ヶ月ほどたって、片耳だけ立った。もう少しやれば、両耳立つかもしれない・・・。でも、でも・・・。耳のなかがかぶれて、かゆがる仔犬が痛々しくて、その頃、ようやく「もういい」と思えるようになった。

片耳しか立たない仔はお嫁さんになれないかもしれない(繁殖させられないかもしれない)と、私は思いこみ、るんの耳を立たすのに躍起になっていたのだった。
この私の言葉を聞いて、友達が、

「垂れた耳の仔は嫌だという人には仔犬を任せなければいいじゃない」
と、あっさりと言われた。言われてみれば、もっともだった。
私は、その言葉に目が覚めたようだった。

その頃の私は、るんにいつかお婿さんをもらい、かわいい仔犬をもうけるのが夢だった。
だから、るんにはスタンダードなヨーキーでいて欲しいという願望があり、それをこの仔に押し付けていた。
でも、私が選んだ仔はどうしても片耳しか立たないヨーキーだった。

このことを受け入れることによって、私は本当の意味で、るんを受け入れることができたような気がした。
耳は片一方しか立たなかったけど、毛の色はどこに出しても恥ずかしくない綺麗な色の仔だった。顔つきも獣医さんのお墨つき。そして、なによりも性格がとても穏やかなで、状況判断できる賢さがあった。この仔にないものをあげつらうより与えられたものの豊かさにもっと早く気づくべきであった。

るんは、私に「愛する」ということを教えてくれたような気がする。



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